今話題のアーバンスポーツ 「Baseball5」の謎に迫る!
東京五輪で大きく話題となったスケートボード、パリ五輪で正式種目となり日本中を沸かせたブレイキン。 これらは都市の中で楽しめる、アーバンスポーツの一種として注目されています。 現代的でカジュアルなスポーツとして若者に人気なアーバンスポーツと、昭和から日本の花形スポーツである野球の良いとこどりを実現したBaseball5が、今ひそかに人気を集めています。 本稿では今後の人気拡大が見込まれるBaseball5について、様々な観点から掘り下げ、注目されている理由について解き明かしていきます。
アーバンスポーツとは
歴史
アーバンスポーツとは都市空間を舞台に行われるスポーツの総称です。アーバンスポーツを構成する競技の多くは、若者たちが既存のルールや施設に捉われず街中の環境を利用した遊びがルーツです。
例えばスケートボードは、1960年代にカリフォルニアのサーファー達が、波の無い日にも楽しめるために始めたものが原型とされています。

引用元:https://sports-for-social.com/3minutes/urban-sports/
ストリートカルチャーに深く根差したこれらのスポーツは、従来の勝利を優先するスポーツと異なり、仲間と楽しむスポーツとして若者のあいだで自発的に広まっていきました。
近年では多くの競技で世界大会が開かれるなど、競技の規模、レベルともに発展を続けています。

なぜ今注目されているのか
アーバンスポーツという言葉がおおきく注目を集めるきっかけとなったのが、2021年に行われた東京オリンピック・パラリンピック競技大会です。
若者のオリンピック離れに危機感を抱いた国際オリンピック委員会は、スケートボードやスポーツクライミングを新競技として採用し、若者・都市的な魅力向上をはかりました。
また、映像編集技術の向上や、Youtubeなど動画配信プラットフォームの発展で選手のパフォーマンスをカッコよく配信し、世界中に拡散することが可能なったため、若者を中心にファンが急増しています。
近年ではRed BullやNikeなどが、若さや自由、型破りなアーバンスポーツのイメージが企業のブランドイメージと一致すると考え、イベントの主催やスポンサードを行っており、大規模イベントの実施も可能になってきています。
引用元:https://www.redbull.com/jp-ja/how-to-prevent-common-skateboard-injuries-best-exercises
「する」、だけでなく「みる」スポーツとしても注目されるようになった結果、アーバンスポーツはイベントを通じて町おこしや地方創生に寄与することも期待されています。
野球の抱える問題点から考える「Baseball5」の人気の理由とは
1936年に日本初の職業野球リーグ「日本職業野球連盟」が発足し、プロ野球の歴史が日本で幕を開けて以降、戦争による中断をはさみながらも長嶋茂雄や松井秀喜などのスターを抱えるプロ野球は日本スポーツ界の中心に君臨してきました。全国に広がる多数の少年野球チームが受け皿となり、競技人口が多い野球ですが、特に小中学生の野球離れが進み近年転換期を迎えています。
2007年に161万人いた野球人口は93万人まで減少しています。
これらの背景としては
- 競技特性として試合時間が長く拘束時間が長いこと
- 広いグラウンドや高価な道具が必要で始めるハードルが高いこと
があげられます。
また、少子化の影響で地方を中心に試合をするための18人が集まりにくいという問題も生じてきています。
高校野球での坊主姿や、厳しい上下関係、少年野球での保護者の当番制などから昭和のイメージを喚起されることも多いようです。
Baseball5の魅力
基本情報
Baseball5は、野球・ソフトボールの世界統括団体である世界野球ソフトボール連盟によって2017年に考案された、新しいアーバンスポーツです。最大の特徴は、伝統的な野球の要素を残しつつ、極限まで競技のハードルを下げた点にあります。
1チーム5人で構成され、打者はボックスから自分であげたボールを手のひらまたは拳で叩き、守備側は素手で守るため専用の道具も必要ありません。

引用元:https://hiroba.njsf.net/archives/2074
また、競技は21m×21m(テニスコートの半分ほど)の正方形のスペースで実施可能なため、広い土地の確保が難しい都市部でも体育館などで実施可能です。
試合は5イニング制で15分から20分程度で終了するため、多忙な若者に最適です。
公式アカウントでの動画発信にも力をいれており、自由に個性が表れている服装などが話題となっています。
従来の野球と異なり、型破りで自由、カジュアルなBaseball5はSNS向きと言えそうです。

引用元:https://first-pitch.jp/article/remarkable-teams/20230607/4808/
強豪国はどこ?
世界野球ソフトボール連盟が主催する、ベースボール5の世界大会、WBSCベースボール5ワールドカップが2022年から2年に1度開催されています。
メキシコシティで行われた第1回大会、香港で行われた第2回大会はどちらもキューバが1位、日本が2位という結果に終わっています。
今年9月に行われた、WBSCユースベースボール5ワールドカップでもキューバは優勝し、世界ランキング1位を維持しており、強豪国と言えそうです。
日本も、ユースベースボールアジアカップで優勝を果たしており、今後のベースボール5の世界大会での優勝が期待されています。

引用元:https://www.wbsc.org/ja/news/cuba-extend-lead-at-top-of-wbsc-baseball5-world-ranking-syria-ranked-for-the-first-time
世界ランキング1位2位は、野球の強豪国がランクインした一方で3位には野球の国際大会ではあまり実績を残していないフランスがランクインしています。
野球人口が伸び悩むフランスで、普及活動の一環としてフランス野球連盟の会長が、世界野球ソフトボール連盟に働きかけ、ベースボール5のルール整備を行った経緯があり、早い段階から取り入れられていたことが背景にあります。
2026年には、ローマでのWBSCベースボール5ワールドカップ開催が決まっています。
2026年には、ローマでのWBSCベースボール5ワールドカップ開催が決まっています。
道具を使わず、狭い場所でも遊べる手軽な野球として欧州などでの人気上昇が期待されています。
今後の展望
Baseball5は男女混合チームを原則としており、フィールドには常に男女最低1人は立っていることが求められています。
またバットを使わないので、従来の野球に比べ未経験者でも活躍しやすく多様な人が楽しめるスポーツです。
少人数・短時間でプレー可能で、体育館など小さなスペースでも実施可能なことから学校教育への導入も見込まれています。
野球人口減少が続く中、競技の入口となることが期待されています。
従来、野球は道具が高価、スタジアムが必要といった理由で、国際的な普及が難しいとされてきました。
Baseball5は、高価な道具やスタジアムが無くても試合が開催可能なことから、アフリカなど経済が発展途上の地域での野球普及に貢献していくことが予想されます。
Baseball5は、2026年ダカールユースオリンピックの正式種目に採用されました。
オリンピック競技に採用され知名度が大きく向上した他のアーバンスポーツのように今後の知名度拡大が期待されています。
まとめ
本稿では、野球をもとに進化したBaseball5について掘り下げてみました。
今年の夏の甲子園ではユース世代のBaseball5日本代表選手が始球式をつとめるなど、着実に日本でも知名度が向上しています。
都会のビルに囲まれた場所で、性別や年齢を問わずBaseball5をプレーしている人たちをみかける時代が近づいているのかもしれません。
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