中東で野球??「ベースボールユナイテッド」が目指す野球人口10億人の未来!

ベースボールユナイテッドは、中東・南アジア地域初のプロ野球リーグです。 リーグには30を超える国籍の選手が参加し、MLBやNPB経験者も多くレベルの高いリーグとなっています。 アメリカ人起業家のカッシュ・シャイフ氏が、マリアノ・リベラやロナルド・アク―ニャJrなど現役選手、引退選手問わず20名ものMLB関係者からの出資を受け経営を行っています。 2023年からショーケースと呼ばれるエキシビジョン試合がドバイで行われ、MLB通算2639安打のロビンソン・カノ―やNPBでも2球団で活躍したスティーブン・モヤが参加するなど密かに盛り上がりを見せていました。

ベースボールユナイテッドとは?

歴史的な2025シーズン

ついに今年から初のリーグ戦である「シーズン1」が開催されています。
ドバイを本拠とするミッドイースト・ファルコンズ、同じUAEのアブダビをホームとするアラビア・ウルブズ、インドを代表するムンバイ・コブラズ、パキスタンを代表するカラチ・モナークスの4チームによって初代王者が争われています。
Baseball United Jersey Rankings
引用元:https://baseballunited.com/
今年は11月14日〜12月14日にかけて、全21試合が行われます。

この地域で唯一のプロ野球場

当初はドバイ国際クリケット場を野球用に回収して開催されていたベースボールユナイテッドですが、今年はUAEの砂漠の中に新設された、中東・南アジア地域史上初のボールパークである、Baseball United ボールパークで全試合が開催されています。
引用元:https://baseballunited.com/
最大6500人の観客を収容できる座席が整備され、お手軽な外野席からVIP用の席まで用意されています。
球場の寸法はヤンキースタジアムを参考にした本格球場であり、全面人工芝で整備されています。

ここでしか見られない独自ルール??

野球未開の地の中東で多くの人に興味を持ってもらうため、ベースボールユナイテッドでは演出を重視しています。
そのため従来の野球にはなかった独自のルールがいくつか設けられています。
ここでは代表的な2つを紹介していきます。
1つ目はマネーボール、従来の白い野球ボールと異なり黄色く塗装されています。
攻撃側の監督が1試合3回までマネーボールの使用を宣言できます。
マネーボールの使用時には本塁打の得点が2倍になります。
これにより、点差がついてしまった場合でも一気に逆転できるチャンスが出てくるので緊張感が保たれた試合を見ることができます。
2つ目はDランナー、日本語では指名代走と呼ばれ、1イニング一回までなら何度でも代走として出場できる走塁専任の選手の起用が可能です。
これにより、足に自信のある選手の出場機会が担保されより多くの人がベースボールユナイテッドでのプレーを目指すことができます。
スピード感や派手さを狙った仕掛けとしても、野球未開の地での野球振興の施策としてもこれらは非常に重要なものとなっています。

なぜ中東・南アジア?

世界有数の産油国が集まるこの地域では、野球に留まらず多くのスポーツ関係者の注目の地となっています。
2022年のカタールワールドカップや、豊富なオイルマネーでクリスティアーノ・ロナウドなどスター選手を集め話題を呼んでいるサウジアラビアのサッカーリーグなどが有名です。
引用元:https://asia-soccer.biz/2023/01/05/al-nasr/
しかしベースボールユナイテッドは中東のオイルマネーではなく、多くのMLB選手などからの出資金で経営を行っているという特徴があります。
中東という金満なイメージからは程遠い中でベースボールユナイテッドは緻密な戦略のもと発展を続けてきました。
ベースボールユナイテッドの本拠地ともいえるドバイは過去50年の驚異的な発展により中東における経済や文化の中心地として確固たる地位を築いています。
また、NBAの試合が開催されるなど、活発なスポーツ関連の投資が行われており、スポーツビジネスを行う上での環境が整っていると言えます。
さらにこの地域には所得水準の高い人が多く、現地でのスポーツ観戦やテレビでの観戦にもお金を払う傾向があります。
このような人々をプレミアムファンと位置づけ、収入源である放映権やスポンサー料、チケット代などを確保しようとしています。
また、南アジア地域には従来から野球に近いクリケットが普及しているという特徴があります。
引用元:https://spaia.jp/column/cricket/2434
インド、パキスタンを含む南アジア地域は人口が20億人に上り、巨大な市場となることが期待されています。

日本球界関係者も躍動中??

元助っ人たちも大暴れ!

いつの時代もプロ野球各球団には、チームを好成績に導くべく外国人選手が来日します。
彼らはパワフルなプレーや個性強いキャラクターで助っ人と呼ばれ在籍期間が短くても愛されファンの記憶に強く残っています。
ここベースボールユナイテッドには惜しまれつつも日本を去った元助っ人たちが、もう一花咲かせようと集っています。
例えば2023年のショーケースにはNPB2球団で活躍し3年連続2桁ホームランを放ったスティーブン・モヤが参加しました。NPB在籍時には2mを超える身長でも話題となりました。
NPBを離れた後、海外の独立リーグを転々としていた彼は、ベースボールユナイテッドでの活躍が目に止まり、2024年シーズンから台湾プロ野球のチームと契約を結びました。
引用元:https://noticiaspais.com/60187-pelotero-steven-moya
台湾では得意の打棒が爆発し本塁打王やベストナインを受賞しています。
その他にも阪神で活躍したウィリン・ロサリオなど多くの選手が参戦経験があり、日本の野球ファンがベースボールユナイテッドに興味を持つきっかけにもなっています。

日本人だらけの謎のチーム??

ドバイに拠点を置くミッドイースト·ファルコンズの練習風景を見ると多くの人が驚くと思います。
砂漠に囲まれた異国の地のグラウンドで、多くの日本人が野球の練習を行っているのです。
なんとミッドイースト・ファルコンズに所属する23人の選手のうち14人が日本人選手です。
引用元:https://safarilounge.jp/online/culture/detail.php?id=18519&p=1
DeNAベイスターズからは成長のための出場機会を確保するため若手2選手が派遣されています。
また、ソフトバンクホークスやMLBで活躍した川崎宗則選手や、西武や巨人に在籍した中島裕之選手など、日本代表経験のある大物選手も参加しています。
このようなNPB経験者に加え、後述する日本国内のトライアウト企画を勝ち上がった選手も参加するなど、多様な選手が活躍中です。
野球大国、日本出身の選手たちが、ドバイの地でどのような活躍をはたすのか、目が離せません。

TBSで特集!トライアウト企画「PLAN D」

ドバイ、ドリーム、ドラマチック、夢を掴むための物語

書類選考を通過した、年齢、職業、野球歴不問の297人が7月ベルーナドームに集められ、プロ野球選手になるという夢を掴むまでのサバイバルが始まりました。
参加者に元NPB選手やYoutuber、元甲子園球児なども含み、従来の実戦形式のみではなく特色のある種目が実施される前代未聞のプロジェクトです。
この様子はTBSの大人気スポーツドキュメンタリー番組「バース・デイ」で密着取材が行われており、テレビやYou tubeでその様子が放送されました。
様々なバックグラウンドの人たちが、夢を叶える最後のチャンスととらえ全力でプレーする姿は多くの視聴者の心をつかみました。
引用元:https://tver.jp/episodes/epkh1e6zw7
結果的にこのトライアウトからは3人の日本人選手がプロ契約を結ぶことになりました。
日本のクラブチームなどでプレーをしていた彼らは、このトライアウトで結果を残したことで、日本代表経験のある川崎宗則選手などとチームメートとなり、プロ野球選手への仲間入りを果たしました。
まさに、ドリームを掴んだ彼らの活躍から目が離せません。

期待される日本市場

世界野球ソフトボール連盟の世界ランキングで1位を誇る日本は、野球観戦の文化も深く根付いています。
ベースボールユナイテッドの創業者カッシュ・シェイク氏も、トランペットを中心とした応援文化やイニング間のエンターテイメントはベースボールユナイテッドに大きな影響を与えるだろうと話しています。
引用元:https://www.asoview.com/leisure/act1059/
また、ベースボールユナイテッドにとっては、リーグの質の担保とビジネスモデルの確立の2点において日本市場が非常に重要と言えそうです。
発足間もない新興リーグがプロスポーツとしての格を確立するためには、高い技術と規律を持つ選手の存在が不可欠です。
ミッドイースト・ファルコンズに中島宏之選手や川﨑宗則選手といったベテランから若手まで多数の日本人を配置したのは、彼らのプレーがリーグ全体の競技レベルを引き上げ、練習姿勢などが手本となると期待しているからでしょう。
さらに、ビジネス面での期待も大きいです。
ベースボールユナイテッドが目指すのは、現地観戦にと止まらず、世界中のファンを呼び込むグローバルなファンコミュニティーです。
熱狂的な日本の野球ファンは、彼らにとって理想的な顧客ターゲットとなりえます。
TBSとタッグを組んだ「PLAN D」などは、まさに日本のメディアとファンを巻き込むための周到な布石と言えるでしょう。

ベースボールユナイテッドが描く未来図

このコラムのタイトル通り、ベースボールユナイテッドは野球人口10億人を目指しています。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/9c40d1bc7aafc8f0.html
そのための取り組みの一環として、野球が定着していない国の選手を育成するための枠が各球団に設けられています。
これにより、インドやパキスタンなどの南アジア地域の選手、さらにはフィンランドなど欧州出身の選手などがベースボールユナイテッドに参加しています。
野球未開の地の人であっても、母国の選手が試合に出るとなれば試合に興味が湧きます。
プロモーションの一環としてベースボールユナイテッドの観客席には多くの南アジア出身の招待客が招かれていますが、彼らの声援は母国出身選手の登場時にひときわ大きくなります。
引用元:https://www.dubaieye1038.com/news/sports/cano-hjelle-inspire-mid-east-falcons-win-over-mumbai-cobras/
シーズン1となる今年はなんと17カ国から選手が集まってきており、設立当初からの「世界中から新たな才能を発掘する」というミッションが着実に実行に移されています。
現在北米や中米、東アジアで人気スポーツと言える野球も、他地域では未開拓のままと言えます。
彼らの野球にかける熱い情熱が世界中に広がっていくことを期待せずにはいられません。

まとめ

本コラムでは2023年に設立され、今年記念すべきシーズン1を開催しているベースボールユナイテッドについて深掘ってみました。
日本では身近なスポーツである野球も、遠く離れた中東や南アジアではまだまだ普及していません。
さらなる野球の発展のために、情熱を注いでいるベースボールユナイテッドの行く末に期待しかありません。
今シーズンの様子はYouTubeチャンネル「TBSスポーツ」などで確認することができるので、興味を持たれた方は是非1度見てみてください。
新時代の野球が目の前には広がっています。

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